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誰も来ないような山の中の展望台で、 プラチナ色の初夏の光の中に まるで眠っているような里の人家を見おろした私たちは 悠々と弧を描くトビを 柵にもたれてただ目で追っていた トビの声が緑の谷に尾をひくように流れていたように思うのも 記憶の中だけの音なのか 近くて遠い真昼の記憶 谷の中を響いて届く 有線放送ののどか過ぎるネタを笑ったよね 二人は全く重なりそうもない、生き方でそれぞれここへ辿りついて 過去と、輝くか凡庸かの未来のあいだで そこにだけ ぽかんと浮んでしまった雲のような場所に 二人っきりで隣あって、ただ立ってしまった その不思議、人と人との交わりの奇跡ときらめきを ”人生の一瞬の交差。”と私が言うと、 ”帰りたくないよ”とあなたは言ったね。 ・・・・・・ということで 前髪を切ることにした 小さな工作用ハサミでジョキジョキ 切ってみた はさみを縦に使ってジョキジョキ 切った 眉毛の下に女の子の目がくるっと現れて不敵に笑ったので びっくり、かわいいと思った 頭を後ろに反らせても 髪がパサリとも動かない 世界が軽くておもしろい あした、誰かに出会うのが楽しみだ なるべくなら泣くことの少なくて
笑っていられる人生がいい すべてを柔らかく受け止める 花のような人生を ......と、思うのとは反対に きっぱり、涙を流しても 汗をふりとばし 喉鳴らして水を飲む 達成感、そんな人生にも憧れる 指針はいつも左右にぶれて あっちへ こっちへ 日々、てくてくと歩きつづける たぶん、 行き着くところが 行くべきところ ![]() 言葉ケットにくるまれて眠ると 朝は言葉より先にやってきており 小指をたてて コーヒーカップに溶けゆく言葉を揺らして沈め 昨夜縫い綴じた言葉を朝陽に透かし見る 甘酸っぱいコトバを トオストにたっぷりぬって朝食とし 言葉の裾口からぐにぐに伸びる蔓花に ぱらぱら水をかける やがて言葉少なく時計が夕焼けを引いてくる頃 たすき掛けの言葉を解いて脇にたたんで 櫛でけずって 表へ紛れる そおして 言葉の要らなくなった町の隅っこで 今夜もあの人と待ち合わせ ![]() 目をつむり胸の柵をもち上げると
入ってきた新しい空気に、 カゴの中、羽根をうながされた白い鳩が 風に乗り、白い空に解かれてゆく どろどろになっていた灰色の迷い、黒い悩みを 諦め、尊厳、理想、に時を掛けあわせて 白く柔らかい鳩に変えて 空へと放つ 晴ればれと鳩は 空に吸われてゆく 鳩と空との区別がつかない点が消えるまで 見送る 見とどける 軽くなって 解き放たれて 鳩よ、鳩よ いつか幸せの地を見つけ 降りたってね 鳩よ、鳩よ 私よ ![]() 白い紙束 膝に載せ 人行き 陽注ぎ 影動く 世界という名の ドームの内で 凪いだ舳先で 風を聴く もしも、 もしもが叶うなら 私は 詩人に、 なりたいな 空気中から 言葉をよりだし 指えんぴつで なぞってく 一人遊びが 許されて ![]()
今、
私の人生と あなたの人生の 真っ白い小鳩たちが そこでふいに出会って おやっと不思議そうに 見つめ合っています ―なんだか、他と違うみたい―
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